プロが髪の毛をカットする時に使うハサミの秘密
今回は、理容師や美容師が使うハサミについてのお話です。
上の画像は、私たちがカットをする時に使うハサミです。
いわゆるプロ専用のハサミということです。
随分とたくさんありますが、これらは全て私が所有しているハサミです。
当然の事ですが、これらのハサミは理容師や美容師以外の人が使うことはありません。
それぞれのハサミをよく見てみると、刃の長さや形が違いますよね。
ハサミの形や長さの違いがある訳は、私たちがカットをする時に使用目的に合わせてハサミを使い分けるためなのです。
お客様のカットをしていると、時々「そのハサミって、いくらするの?」と聞かれることもありますが、今回はハサミのお値段とハサミの種類について解説します。
上の画像のハサミは、刃の長さが一番長いタイプのハサミです。
このようなタイプのハサミを「刈り込みばさみ」といいます。
「刈り込みばさみ」は、私たちが「刈り上げ」という技術をする時に使うハサミです。
「刈り上げ」は髪が短い男性に多くつかわれる技法なので、「刈り込みばさみ」は美容師よりも理容師がこだわりを持つハサミです。
この「刈り込みハサミ」の切れ味次第で、仕事の効率やカットの仕上がり具合が大きく違ってきます。
「刈り込みばさみ」にこだわりを持つ理容師は、切れ味だけではなくハサミの材質にもこだわる事が多いです。
15年位前までは、ステンレス製の「刈り込みばさみ」は2万円程度で購入ができました。
コバルトやバナジウムなどの合金を使ったハサミは、少し割高で最低でも6~7万円でした。
しかし最近では、ほとんどのハサミがステンレス製になりましたが、性能が良いものは、とても価格が高くなりました。
また、ハサミの材質だけではなく、刃の構造によっても価格が違います。
現在は外国製の安いものだと1万円程度で買えますが、性能が良くないのでベテランは使いません。
一般的な「刈り込みハサミ」は5~6万円で、性能が良いものだと最低でも約10万円です。
意識の高いスタイリストは、大体7万円以上の「刈り込みばさみ」を使うことが多いのですが、品質が良いものは刃の中間から刃先の部分までムラのない切れ味を持っています。
その上、はさみの切れ味が長く持続します。
切れ味が長く続くハサミの事を、私たちは「永切れするハサミ」と言います。
このようなハサミの切れ味は、刀を作るための日本の伝統技術が生かされているとのことで、岐阜県の関市や大阪府の堺市が産地として有名です。
次に紹介するのは「スキばさみ」です。
この「スキばさみ」の事を、「セニングシザー」と呼ぶ場合もあります。
「スキばさみ」は、髪の量を調整する時に使います。
この「スキばさみ」については、以前は、あまりこだわりを持つ人が多くありませんでした。
職人気質のスタイリストの中には、「スキばさみを使わない」という方もいたほどです。
しかし最近は「スキばさみ」の性能が飛躍的に良くなったことや、ヘアスタイルの創作に不可欠になったので、こだわりを持つ人が増えてきました。
上の画像をご覧ください。
写真の上に写っているのは、高級な「スキばさみ」で約12万円です。
下に写っているのは、約4万円の一般的な「スキばさみ」です。
上のハサミは刃のギザギザ部分が微妙に湾曲しているのに対し、下のハサミは刃が真っすぐです。
また、上のハサミは柄の部分が左右が対称なのですが、下のはさみは左右が非対称です。
この二つの違いは大したことないように見えますが、この違いによってカットの仕上がりに大きく差が出ます。
約4万円ハサミは昔からある一般的なものですが、これを多用するとヘアスタイルを仕上げた時に、髪がはねたり質感がない仕上がりになってしまいます。
性能が良い「スキばさみ」は価格が高いのですが、多用しても仕上がりに問題がでません。
むしろ使うことによって、良い仕上がりになる事が多いです。
そして最後に紹介するのは「ミニばさみ」です。
私たちは、この「ミニばさみ」を「カットシザー」と呼ぶこともあります。
「ミニばさみ」はカット全般に使うハサミで、名前のとおり刃の長さが短く小さいハサミです。
若いスタッフがカットのデビューをする時に一番最初に購入するハサミです。
「ミニばさみ」は安い物であれば約1万円で購入できますが、5~6万円の物を使う人が多いです。
上の画像は、「ミニばさみ」を使ってチョップカットという技法をしている様子ですが、この他にスライドカット、ブラントカットといった色々なカット技術で使います。
「ミニばさみ」は他のハサミと比べて使用頻度が高いので、非常に消耗が早いです。
だから僕は「ミニばさみ」に関しては、あまりこだわりを持っていません。
「ミニばさみ」は高価なもの使わずに、消耗したらすぐに買い替えるようにしています。
・・・ところで。
僕は、以前はドイツの「ヘンケル」というメーカーのハサミが大好きで、少々高くても使っていたのですが、今では日本製のハサミを使っています。
なぜなら、日本製のハサミの方が品質が良くなったからです。
「モノ作りニッポン」の技術は、このように理美容師のハサミにも生かされているという事なんでしょうね。